

なぜ、この時期にアスパラガス?とお思いかもしれません。しかも、ハウスでなく露地栽培のアスパラガスです。初夏に旬を迎えるアスパラガスですが、品種改良や栽培技術が進み、現在では9月末ころまで収穫できるようになったのです。
飯豊町では、アスパラガスの栽培を奨励しています。日照時間が長いため、甘味が濃厚で栄養豊富な、しゃきしゃきした食感のアスパラガスが育つのです。県内でも有数の栽培面積を誇る飯豊町で、アスパラガスを栽培している梅津次雄さんにお話をお聞きしました!
― 敏感で繊細な作物なんです ―
田んぼが広がる景色の中に、もじゃもじゃとした背の高い草のようなものが並んでいます。根元からはアスパラガスがにょきにょき!そう、もじゃもじゃの正体は、アスパラガスが伸びたものでした。
なぜ田んぼの横で作られているのかというと、もともとここも田んぼだったからです。稲作からの転作作物として、アスパラガスは奨励されてきました。もともとは山の方を開拓した際に栽培されたのが始まりで、その後転作田の問題が出てきてからは、田んぼだった場所で栽培されるようになったのだそうです。
「アスパラガスは転作作物の中で一番いいと思うな。」と梅津さん。たくさんの水分を必要とするアスパラガスには、田んぼは最適な栽培場所。梅津さんはかつて大豆を栽培していたそうですが、栽培しやすく収量が多いことなどから、完全にアスパラガスに切り替えたそうです。
しかしいいことばかりではありません。アスパラガスは非常に敏感な作物で、風が強かったりごみが当たったりするだけで曲がってしまいます。病気もつきやすく、盛りの時期は1週間に1度ほど消毒しなければなりません。また、アスパラガスはどんどん肥料を吸うので、堆肥をひいて土づくりをしっかりしていかないと、病気のもとになってしまいます。
そしてなにより大変なのは、休みがないことです。成長がとても速く、一日で10cmも伸びるアスパラガスは、朝夕の2回の収穫を毎日行わなければなりません。そのままにしてしまうと、次に生えてこなくなってしまうのです。そのため、収穫時期の5月から9月の間は、5時に起きて7時ころまで収穫、8時ころまで選果場へ運び、朝ごはんを食べるのは9時過ぎ。そしてまた3時ころから収穫を始める…というもの。この生活を、雨が降ろうが猛暑だろうが休みなく毎日続けなければなりません。収穫自体は重労働ではないかもしれませんが、もじゃもじゃのアスパラガスの“木”が生い茂る風が通らない畑の中で腰をかがめての作業を、毎日2回行うというのは大変な作業です。
― 「堆肥マルチ」ですくすく育つ ―

実際に収穫する様子を見せていただきました。
屈んで畑を見ると、まるで竹林!アスパラガスの“木”の下枝がきれいに処理してあり、地面からアスパラガスがたくさん生えています。下枝を処理することで、
収穫が楽になり、色づきがよくなるとともに、蒸れなくなるので病気の発生を抑えることができるのだとか。畝は堆肥でふかふか、アスパラガスはなんだか気持ちよさそう!
梅津さんは、ひもやベルトをつけた自作の収穫かごを装着し、長靴で畑に入っていきます。はさみでちょきちょきと収穫しては、竹の棒でサイズを測ります。25cmが基準の長さだそうで、長さをそろえてカットし、かごに入れていきます。この作業を繰り返し、多いときには一列を収穫しただけでかごがいっぱいになってしまうのだとか!

梅津さんの畑は、
堆肥マルチというやり方をしています。堆肥をかけることによって雑草が出ないようにし、夏には土からの水分の蒸発を防ぎます。また、毎年堆肥を上げ続けているため高畝になり、収穫もしやすいのだとか。
そうしてできた梅津さんはじめ飯豊町のアスパラガスは、評判がよく大変売れるため、数が足りないと言われているのだそうです。

おいしい飯豊町のアスパラガス、この日は
三五八漬けをいただきました!アスパラガスの三五八漬けとは初めての代物。一度茹でてから三五八に漬けたのだそうです。しゃきしゃきとした食感と、ほんのり優しい甘味が口に広がりました。
梅津さん宅では、曲がるなどして売り物にできないものがたくさんでたら、
塩干しにするそうです。水分が多いアスパラガスは乾燥が難しいですが、塩で干すと悪くならないそう。このアスパラガス塩干し、知る人ぞ知る珍味で、食したことがある人はこぞってそのおいしさを語るのだそうですよ!
― 飯豊町のアスパラガス ―

梅津さんは、退職後に代々続く土地で農業を始められました。現在は、
米、米沢牛、アスパラガスを育てています。アスパラガスは、土地を借りた時に作ってみたところ、栽培がとても面白かったことがきっかけで始められたのだそうです。飯豊町でも力を入れているため、各種の勉強会を梅津さんの畑で開くことも少なくないのだとか。
転作作物として最適で、町でも力を入れているアスパラガス。でも、
若い世代はなかなか参画しないことが悩みの種です。なぜかというと、やはり休みがないことが一番の原因のよう。栽培する後継者が少しでも増えてくれるといいですね。
「新しく、県が取り組んでいる栽培方法があるんだ」と梅津さん。
点滴灌水と言って、ぽたぽたと少しずつ水をやるシステムです。これにより、節水ができるとともに湿度を保つことができます。しかしそれにはポンプを回さなければならず、電気が必要となります。当然畑には電源がない。そこで取り組んでいるのが、県で進めている
ソーラー発電。ソーラー発電で得た電気でポンプを回し灌漑をするシステムを、飯豊町でも進めようとしているのです。
転作問題解決のために用いられた、アスパラガス栽培。様々な工夫や試みを実施しながら、いまでは飯豊町の農業を支える大切な作物のひとつとなっています。9月いっぱいまで味わえますので、販売店で見かけたら召し上がってみてくださいね!
(取材日:2013.8.30)

「元気な真鴨がおいしく安全なお米を育てる」
- おきたま興農舎


「紅大豆に夢を託して」
- 川西町紅大豆生産研究会 淀野貞彦さん
