「野生のこくわを、町の特産品に!」
小笠原英信さん
正式名称は猿梨(サルナシ)で、キウイフルーツに似た果物、こくわ。酸味と甘みがあり栄養豊富なその果物は、飯豊町で力を入れている作物のひとつです。
こくわは、25年ほど前から飯豊町で栽培されるようになりました。かつて萩生地区では10人ほどの生産者がいたそうですが、現在は5人にまで減ってしまったそう。
今回は、飯豊町でのこくわ栽培を指揮した小笠原英信(えいしん)さんに、お話を聞きしました!
― 山に自生しているこくわを栽培する ―
「今年は糖度が上がらなくてね」と、たわわに実るこくわの果汁をとり、糖度を測る小笠原さん。例年ですと、完熟ではない今の段階でも6~7度の糖度があるそうです。
こくわの木は、1年で5mくらい伸びます。苗を植えて2年目から収穫できるようになり、
5~7年の木が一番いい実をつけるのだとか。細い木の細い枝にはこれでもかとこくわが実り、なんと一つの木に5~10kgもの実がつきます。飯豊町は年間1.5トンほどの収穫があるのだそうです。
飯豊町でこくわの栽培が始まったのは、25年ほど前。中津川地区に住む方が山に自生していたこくわを植え付けし、栽培に成功したことからでした。しかし斜面での栽培は大変な上、雪害や霜の害もあり、続けていくには難しい状況でした。
当時飯豊町長だった渡部孝吉氏は、これをなんとかしたいという思いがありました。その思いを受け、当時議員を務めていた小笠原さんは、自身の後援会の役員10人にこくわ栽培の協力を依頼。5,000本の苗を購入し、永年転作地などで栽培を始めました。萩生地区では、ピーク時2ヘクタールにまでこくわ畑は大きくなったそうです。
こくわの花が咲くのは6月末。7月には実がつきはじめます。小笠原さん曰く、
一番怖いのは“霜”とのこと。霜にあたってしまうと、実も全部落ちてしまい、落ちた実は商品にならないため捨てざるをえません。程よく熟したところで、霜が降りる前の9月頭ころまでに収穫が行われます。
「食べ物になるわけですから、農薬は一切使わないんですよ」お寺の住職でもある小笠原さんの信念は、生産がはじまった25年前から変わりません。草の刈りこみを行いながら、現在でも農薬を使用せずにこくわを生産し続けています。
― 野生動物も競って食べる栄養価の高さ ―
収穫されたこくわは、ほとんどが
ジャムや
ワインになります。道の駅などで販売されており、地元はもちろん関東圏や外国でも人気があるそうです。
加工するために出荷する青い実は、切ってみると見た目はキウイフルーツと似ていますが、糸を引くくらいのねばりが!そのままだと酸味や渋みがあるため、
追熟が必要です。そのまま置いて表面がしわしわになってきたら食べごろです。
小笠原さんおすすめの食べ方は、
こくわジュース。びんの中に、よく洗った皮ごとのこくわと砂糖を1:1の割合で入れ、20日くらいそのまま置いておくと、果汁が染み出て実が浮いてきます。実を取り出し、できたシロップを水やソーダ、豆乳などで割ると大変おいしいのだとか!そのほか、酸味があるシロップなので野菜を漬けるとピクルスのようにもなるそうです。
収穫せずに木におくと黄色く熟してきます。すると甘くおいしくなるのだそうですが、
たぬきや
熊が食べに来るのでとても危険。おいしくて栄養豊富なこくわは、
冬眠するときの彼らの食事になるのです。
こくわには、
ビタミンA,B,Cが豊富に含まれています。抗酸化作用、がん予防、免疫力アップ、疲労回復、滋養強壮、整腸補助などの効能があると言われています。まさに、栄養満点!健康のためにも食べたい果物です。
― 飯豊町のこくわ栽培 ―
飯豊町としても力を入れているこくわの栽培。生産組合発足当時の半分にまでメンバーは減ってしまっているため、ピーク時に比べ収量はかなり落ちました。しかし、
県外でも人気があるこくわとその加工品。このまま途絶えてしまうのはもったいないと、若い世代も栽培し始めてるそう。
小笠原さんの声掛けで大きくなった、飯豊町のこくわ栽培。長年の経験から、蔓が長くなりすぎないように調整するなど、どんな方でも栽培しやすいように栽培方法も工夫されています。また、小笠原さんが育てたこくわの苗木は1本200円で購入できるのだとか。ご興味のある方、こくわ栽培にぜひ参入してみませんか?
(取材日:2013.9.5)
(追記:2017.9現在、こくわの苗の販売は行っておりません)
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