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取組みファイル013

「白鷹町のあけびは、生産量も品質にも自信があります」

安達邦博さん


 秋の味覚、あけび。山形県では、芋煮に匹敵するほどこの季節の食卓を飾る代表格です。
 
 あけびは全国の山間部に自生していますが、きちんと畑で栽培して出荷しているのはほとんどが山形県。全国の出荷量のなんと8割以上を占めています。中でも白鷹町は生産量が多く、あけび産地として有名です。
 
 今回は、30年ほど前からあけびを栽培している安達邦博さんに、お話をお聞きしました!
 


― 色がよく、苦みが少ないあけびたち ―

 鮮やかな薄紫色。そこに黄緑色も混ざって、神秘的な色のあけびが棚一面に実っています。あけびってこんなにきれいだったんだ…とため息が出てしまうほど。「あけびは、日差しではなく寒さで色が付きます。色が濃いものが優秀ですが、色の違いは品種によるところも大きいです。味はそんなに違いません。」と語る安達さんが育てるあけびは、色鮮やかで苦みが少なく、県内だけでなく関東・関西へも出荷され、大きいものはディスプレイ用としても利用されています。



 山形県は全国一のあけび生産地。さらに県内産地の中でも、一番生産量が多いのが白鷹町です。安達さんは、ピーク時には一日で200箱以上も出荷しています。 また、白鷹のあけびは出荷時期が比較的早く、お盆過ぎから出回ることも特徴のひとつです。しかし近年は暑さのため収穫時期が遅れているのだそう。白鷹町では30年以上前から栽培に取り組みんでおり、オリジナルの「鷹紫(たかむらさき)」という品種も作られています。
 
 安達さんは朝のうちにあけびを収穫し、その日のうちにお店に並ぶようにしています。収穫したあけびは、大きさ、色、傷の有無などから3段階に等級分けして箱詰めしています。その後農協でも検査され、徹底した品質管理のもと出荷されています。収穫は11月近くまで続きますが、秋彼岸の頃が一番消費が伸びるそうです。
 
 あけび栽培は、春先と収穫間際の暑い時期にすこし暇ができるだけで、ほぼ一年中かかります。また、あけびは雨に弱く、雨に当たりすぎると割れてしまいます。去年は雨が多かったので、2トンくらい割れ果になってしまったそうです。半分は料理店へ卸し、もう半分は捨てることになったとか。
 
 あけびの木の寿命は30年ほど。普通は接ぎ木をして育てますが、安達さんは新しく出る蔓を立ち上げ、親元を離れて根っこをつけるようにしています。畑には、太い老木と新しく育った新木と、様々な太さの木が並んでいました。

― 捨てるところのない万能食材 ―
 
 あけびは昔から、さまざまに形を変えて利用されてきました。皮はおかずに、中身の甘い部分は果物として生食したり、ワインを作ったり、漬物にもできるのだそう。そのほか、種で油をとったり、新芽を山菜として食したり、枝を乾かして漢方薬にしたり、蔓は編んでかごにしたり…。まさに、捨てるところのない万能野菜です。 

 皮の部分の食べ方としては、詰め物をして揚げたり味噌炒めにするだけでなく、甘味噌で煮たり、豚汁に加えても美味だそう。保存食として昔から作られている乾燥あけびや冷凍あけびも、味がぎゅっと凝縮されておいしいのだそうです。

 また、安達さんの息子さんがオーナーを務める、イタリアンレストラン「シャッタカ」でもあけびを使ったメニューを提供しています。玉ねぎやひき肉などを炒め、オーブンで焼いたあけびを混ぜた「白いミートソースのパスタ」。普段とは違う食べ方なので、食べた方はみんな驚かれるそうです。
 
 栄養価としては、あけびには利尿作用があり、腎臓病などむくみを伴う泌尿器系の病気に昔から用いられています。また、高血圧を予防するカリウムが多く含まれているので、炒め物にして食べるといいです。種の部分にはいちごと同じくらいのビタミンCが含まれ、貧血予防に良いとされる葉酸も含まれます。
 
― 全国で需要があるあけび ―
 
 他の作物と同じく、あけびも後継者はあまりいないのが現状です。
「10~20年経つと、かなり世の中変わるんじゃないでしょうか」と安達さん。後継者の問題もそうですが、温暖化により作物が育つ地域も変わり、白鷹であけびが育ちにくくなるのでは…という懸念も含まれています。

  しかし、あけびは作ったら必ず売り先がある作物。県内はもとより全国各地で需要があり、販売単価も高めのため、収入としてはいいのだそうです。「やり方だと思うんですよ。朝早いとか日曜日がないとか言われますが、やり方次第で取れるようになりますよ。」と話してくださいました。

  出荷する箱入りあけびに添えられているあけびのパンフレットには、「天恵の長寿果」の文字。意味をお聞きすると、「栄養がある、というだけでなく、紫はありがたい色ですから。そういう意味合いがこもった言葉です。」とのこと。美しい「あけび色」が実る畑は、なにか良いことをもたらしてくれそうな、そんな予感に満ちていました。

イタリアンレストラン「SIATTACA」 マイページはこちら>>
 
 (取材日:2013.9.5)

取組ファイル030
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取組ファイル021
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佐藤了さん

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