
「雪を活かした、甘みの強い雪室じゃがいも」
有限会社 中津川エフエフ

見た目はただのじゃがいも。でも、食べるとびっくり!しっとりしていて甘い「雪室じゃがいも」です。
雪深い飯豊町の中津川には、冬の間に雪をため込み一年中0~4度の温度を保つ“雪室”があります。米や果物を中心に様々な作物がここで保存されていますが、中でもじゃがいもは、雪室に置くことで糖度が倍になることが知られて、徐々に注目を集め始めています。
今回は、そんな雪室じゃがいもを生産・販売している「有限会社 中津川エフエフ」の鈴木るみさんに、お話をお聞きしました!
― 夏のお祭りと雪室 ―
中津川の細道をぐいっと登ったところに、その雪室はありました。扉がたくさんあって後ろが丸い不思議な建物。冬の間に、除雪機を使ってこの扉から雪を入れ、丸いカーブを伝って下に積もっていく仕組みです。壁側と天井に雪が積もるので、囲むように冷やせるようになっています。
雪室のはじまりは、30年ほど前に始まった「SNOWエッグフェスティバル」がきっかけでした。厄介者の雪を夏までに残しておきたいという思いで、当時は雪の塊にもみとシートをかけて卵のようにして残していたのだとか。雪室が立てられたのは10年ほど前。現在では貯蔵庫として地域の方100名くらいが、ここに米や果物、酒などを保存しているのだそうです。
2年ほど前、アル・ケッチャーノの奥田シェフがここの雪室のことを知り、北海道などでも作られている「雪室じゃがいも」を勧めてくれたそうです。実際にじゃがいもを雪室に入れてみると、3か月以上保存されたじゃがいもは糖度が約2倍に変化しました。一年中保存ができ、冷蔵用の電気を使う必要もなく、さらにおいしくなるという効果から、雪室じゃがいもは注目を集め始めました。山形県内で本格的に取り組んでいるのは中津川地区がはじめて。県内の飲食店でも使われ始めているそうです。
大きな扉を開けて雪室の中へ入ると、ぽたぽたと雪溶け水が落ちる音が聞こえます。
温度0~4度、湿度85%に保たれており、カビ防止のため米袋などにはビニールがかぶせてありました。お米以外にも、お酒や果物やお漬物など、様々なものが保管してありました。じゃがいもは、今年収穫されたものはまだ入っておらず、ここにあるのは全て昨年収穫されたもの。にもかかわらず
しわもなければ芽も出ていません。採れたてのじゃがいものようです。

別室のさらに大きな部屋を見せていただきました。先ほどの3倍はありそうな扉を開けると、中は巨大な雪の貯蔵庫。雪は2月末から3月初めに満杯にし、
7月のSNOWエッグフェスティバルで半分くらいが使われます。そのほか他地域のお祭り、遠くは仙台でも使われたそうです。
10月になると残りの雪を全て出し、ラ・フランスが貯蔵されます。これまで雪でいっぱいだった大貯蔵庫は、この季節になるとラ・フランスでいっぱいになるのだそうです。ここの雪を抜いても、壁側に雪が残っているため温度は変わらないのだとか。
― 驚きの甘さ! ―

この日、レンジで蒸かした雪室じゃがいもをいただきました。見た目はじゃがいもそのまんま。でも食べてみるとそのおいしさにびっくり!
口当たりはしっとりしていてとろりとした甘さ。塩など調味料を使わなくても、素材だけで十分おいしい。
鈴木さん曰く、雪室じゃがいもは
じゃがバターに最適だそうです。また、丸ごと“焼きじゃがいも”にしてもおいしいのだとか。そのほか揚げたり炒めたり、素材そのものがおいしいので、火を通せばどんな料理にしてもおいしく食べられます。
注意点としては、雪室じゃがいもは雪室から出して
10日ほど常温に置いておくと芽が出て味も落ちてしまいます。冷蔵庫だと多少は持つようですが、早めに食べた方がいいそうです。
― 注目が集まる中津川の雪室じゃがいも ―

中津川エフエフさんは、荒れている田んぼをなくしたいという思いから、土地を借りてお米を作ったことからはじまった会社です。米、いちごが主でしたが、雪室じゃがいもは徐々に人気が出てきているそう。
インターネットを中心に業者向けに販売しているため、注文のほとんどは関東、遠くは愛知からも注文があるそうです。
雪室じゃがいもは見た目に違いがないので、
食べてもらわないと価値が伝わりません。鈴木さんも、はじめはイベントなどで詰め放題をしてもらい地域の人へ配るなど、知ってもらう工夫を重ねてきたのだとか。現在は飯豊町としても力を入れており、イベントなどにも積極的に出店しているのだそうです。地域のイベントなどで中津川の雪室じゃがいもを見つけたら、ぜひ一口味わってみてください!そのおいしさに驚くこと間違いありません。
(取材日:2013.9.17)
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