「受け継がれる美しさと旨味、八ツ房(やつふさ)なす」
きへちゃなすの会
つやつやと輝く紫色が美しい「八ツ房なす」。
収穫期間は7月上旬から10月中旬です。
「薄皮丸なす」よりも遅くまで収穫できるのが特徴で、現在でも長井市内で「やづふさ」と親しまれるなすです。
八ツ房なすの由来は、房がたくさんなることや果実の断面が八角形になっているように見えることなど様々な説があります。
今回は、代々受け継がれた八ツ房なすを現在も守り続ける、長井市の矢久保和子さんにお話をお聞きしました!
― 守り続けられた種からなる特別ななす ―
250年前頃に、新潟から長井市に移り住んだ一族が持ち込み、生産が始まりました。その当時は長井地区一帯のどの家庭でも作られていたものでした。戦後も栽培は続けられましたが、混乱の中で種が残っている家でも作り手が減少し、絶滅の危機に瀕しながらも、矢久保家では種を守り続けてきました。
その後、矢久保さんの父である喜兵衛さんが、「八ツ房なす」を繋いでいくために、信頼できる生産者に種分けをし、苗農家をしながら、徐々に面積を増やしていきました。
その後は、地区内で親しまれていたなすでしたが、矢久保家で作る「八ツ房なす」を見つけた方から「特別ななすではないか」との声が上がり、伝統野菜として認定されるきっかけになりました。八ツ房なすは平成28年1月に伝統野菜として認定され、その後、徐々に認知度が高まっていきました。
― どんな調理法でも美味しいマルチなす―
栽培方法は、通常のなすの栽培と違いはありませんが、収穫期間は7月上旬から10月中旬まで、薄皮丸なすよりも遅くまで収穫できるのが特徴です。
丈は高くなり、写真の鉄パイプの高さ(2mほど)までになるとのことです。また、形状はやや縦長の巾着型で、トゲが少ないので扱いやすいです。花どまりが小さいため見た目が良く処理が省けます。つやつやと輝きが美しく、一般的ななすよりも柔らかいです。しかし、柔らかいがゆえに風や擦れに弱いため、傷をつけないよう試行錯誤されています。
置き漬以外にも一夜漬けもできるほど硬くなりにくいです。煮崩れもなく、焼いても揚げても煮ても美味しいマルチななすとして楽しんでいただけます。
― 受け継いだなすをこれからも ―
現在、矢久保さんは父である「喜兵衛さんの作ったなす」で
「きへちゃのなす」と呼ばれていたところから「きへちゃなすの会」というグループを作り、生産を行い、メンバーは現在7名です。情報交換を行ったり、置賜総合支庁西置賜農業技術普及課から指導を受けたりしながら技術力の向上に努めています。「個人でやれる範囲は狭いので、将来は共同体で生産を行うことを考えていけたらいい」と話してくださいました。
自根のなすは連作が出来ないため、広い畑を要します。2~3年で生産するのが難しくなる生産者さんがいるため、その対策として、今後はグループ内で接ぎ木苗作りを行い、生産者を守っていくことを検討しているそうです。
矢久保さんの種から八ツ房なすを生産している土屋さんの種をグループ内で分け、統一した八ツ房なすを生産して、今年は1年目にあたります。今後は徐々にグループでの生産を増やしていき、いずれは一般の方に広めていくこともできればと考えているそうです。
また、なかなかお客様の声を直接聞くことができないため、機会がありましたら、ぜひその声を聞かせていただければとのことでした。
(写真は、左から土屋さん、矢久保さん、横澤さん、八木さん)
(取材日:2017.9.25)
● 八ツ房なすの取扱店 ●
(季節により扱っていない時がありますので直接お問い合わせください)
・JA山形おきたま長井愛菜館
所在地:長井市中道2-6-15
電話番号:0238-84-2682
・市民直売所 おらんだ市場 菜なポート南店
所在地:長井市東町7-27
電話番号:0238-83-2345
・色摩園芸直売所
所在地:長井市九野本746-2
電話番号 :0238-84-6766
・道の駅川のみなと長井
所在地:長井市東町2-50
電話番号:0238-87-1121
- 「日本一の「行者菜」生産地」
- 行者菜生産グループ
- 「この土地でしか育たない高豆蒄瓜」
- 渡部こうさん