花作だいこんは、独特の歯ざわりと長期保存が可能なことから、昔から重宝されてきました。かつては漬物以外にも、煮物など大根料理には全て花作だいこんが使われていたそうです。江戸時代、藩主であった上杉の殿様にその味を喜ばれ、現在の長井市花作町で作られていることから「花作だいこん」と名付けられたといわれています。
しかし、時代が変わり冷蔵庫などの普及や食生活の変化により、長期保存のために漬物にする必要性もなくなり、昭和50年代には栽培する人がいなくなってしまいました。
その後、わずかに保存されていた種子で「まぼろしの大根」復活を願い、昭和55年に一部の農家によって栽培から加工、販売までを手がけ、地場産業振興のもとに活動が続けられました。しかし収量の上がらない花作だいこんは、生産量が確保しずらくなってきたことと生産コスト上昇などが重なり、またしても栽培が難しい状況になってしまいました。再び花作だいこんは途絶えようとしましたが、平成14年に再度、花作だいこん復活の動きが始まりました。地元の人の努力により、現在では品種の保護と普及活動が広まりつつあります。平成17年には、スローフード協会本部(イタリア)から、食の世界遺産「味の箱舟」にも認定されました。
花作だいこんは、円筒形または徳利形をしており、長さは14~15cm、重さ500g程度と、一般の大根の約1/3の大きさです。
生育期間が一般の大根に比べて長く、8月中旬に種を蒔き、およそ90日後の初霜の降りる11月中旬~下旬頃に収穫します。
花作だいこんを最も美味しく味わえる調理法は漬物です。身が硬いため、パリパリとした独特の歯ざわりがあります。漬ける際には味噌漬けなどの「調味漬」の前に、「下漬け(一次加工)」を行います。「下漬」も、「荒漬」と「本漬」と二度行います。大変手間がかかりますが、これも冬を乗り切る先人の知恵。そして手間をかけたからこそ、格段においしくいただけるのです!