日本では古来から、海岸や砂丘に野生で生えていたおかひじきを野菜として食していました。海辺に住んでいた人々が海藻の「ひじき」に似ているという事で「陸のひじき」、おかひじきと呼ぶようになりました。
おかひじきは現在、山形県の内陸にある置賜地方で盛んに生産されています。それは、江戸時代に元来自生していた海に面した庄内地方から、おかひじきの種が最上川を遡って、船着き場があった現在の南陽市辺りにやってきて栽培が始まり今に至ります。
現在の栽培の主流はハウス栽培やトンネル栽培です。種播きは、水に浸して芽を少し出したもやしのような状態で畑に蒔きます。そして、15~20センチに伸びたところを包丁で刈り取って収穫します。一回刈られたくらいでは平気な作物で、何度も収穫できますが、実際には刈り残しの部分が硬くなるため、蒔きなおしをして年数回収穫します。日照時間が短くなると、花芽がついて収穫できなくなるため、これを防止するため電照を行う場合もあります。
また、多くの生産者は、畑の一部を刈らずに成長させ、花を咲かせて種を自分で採ります。
おかひじきを買うときは、全体的に緑色が濃く、育ちすぎていない小さなものを選びます。
食感はシャキシャキで、しかも葉物特有の青臭さやクセがないのでとても食べやすく美味しいものです。そのため、野菜が嫌いな子供でも「これなら食べられる」と食べてくれることも多いです。おかひじきは柔らかい若芽を食べますが、ややアクがあるので2分ほどお湯で茹でてから食べます。あまり茹ですぎるとシャキっとした食感が損なわれてしまうので、茹ですぎには注意します。
定番はゆでたおかひじきをカラシ醤油やショウガ醤油で味わうお浸しです。子供にカラシ醤油では辛いので、醤油少々にマヨネーズをかけるとよりクセが少なくなり、さらに食べやすくなります。また、最近はサラダ・酢の物・和え物・天ぷらなどにも使われます。
このおかひじき、ひじきと似ているのは何も見た目だけではありません。ヒジキ同様、ミネラル豊富でひじきと同じくらい栄養満点な食品なのです。
参考文献
おしゃべりな畑―やまがたの在来作物は生きた文化財― ~どこかの畑の片すみでⅡ~
山形在来作物研究会/編 山形大学出版会 2010年刊
「日本の野菜 青葉高著作選Ⅰ」 青葉高 八坂書房 2000年刊