様々ある山菜の中でも、多くの人になじみが深く、身近な存在のわらび。わらびは、古くは『万葉集』にも詠まれており、その時代から特有の季節感を持たれていたことが伺えます。置賜地域では、上杉藩政の中で、天明・天保の大飢饉の飢餓を救った上杉鷹山公時代の山菜書に、わらびがアク抜きして食されていたことが記されています。その頃には既に、人々の貴重な食料だったのですね。
置賜地域には、小国町、飯豊町など数多くのわらび園が整備され、春になると県内外の方がわらび採りに訪れます。また、森林資源が豊富な地域のため、自生している自然のわらび採取も楽しむことができます。わらびの生産量については、山形県の生産量は300トン以上で、なんと全国第1位を誇っています。そのうち置賜管内の生産量は200トン以上で、県内生産量の7割ほどを占めているのです。まさに、置賜はわらび王国!多くの方がわらび採りに置賜を訪れるのもうなずけます。
わらびは日当たりの良い場所に自生しており、平地では4月下旬頃から、山地では5月上旬頃から旬を迎えます。採取する際には、葉が開きすぎていないものを選び、柔らかいところから折ります。
わらびは、ホウレンソウやブロッコリーなどの緑黄色野菜と同様にカリウムを多く含み、血圧を下げる効果があるといわれています。さらには、食物繊維やビタミンCも多く含まれています。また、乾燥わらびにするとカリウムや鉄分が10倍以上となります。
独特のぬめりと風味があり、山菜好きにはたまらない、春の味覚わらび。ですが食べるまでにはひと手間かかります。アクが強いので、十分にアク抜きをしてから調理しなければなりません。アク抜きは、鍋にたっぷりの水を入れて沸騰させ、木灰や重曹を入れ火を止めそこへ水洗いしたわらびを浸し一晩置きます。わらびは時間が経つと硬くなってしまうので、できれば採った日のうちにアク抜きをするとおいしく食べられます。アク抜きしたあとは、水気を切って冷凍しておくと、長期保存が可能です。
食べ方としては、おひたしや煮物などのほか、塩漬けや醤油漬けによる保存食用としても利用されます。また、地下茎からデンプンをとって、わらび餅や非常食に古くから利用されています。