野生種の原産は中国で、古代より中国では延命長寿の花として菊茶・菊花酒、漢方薬として飲まれていました。日本に伝来したのは奈良時代末から平安初期です。元来、菊は長寿の霊草とされ、日本でも平安時代には中国の風習に習い、天皇の御前に菊を飾るなどしていました。菊の花びらを食べる習慣は、江戸時代から始まったとされ、現在山形県は食用菊の生産量で全国1位となっています。
食用菊は植物学的には観賞用の菊とまったく同一種であり、食用菊の中には実際に観賞用菊から転用されたものも多くあります。
いくつかの品種があり、主なものには刺身などのつまに添えられている小さな黄色い小菊や、山形県で「もってのほか」、新潟県では「カキノモト」と呼ばれている紫色の大輪種「延命楽(えんめいらく)」、黄色い「阿房宮(あぼうきゅう)」などがあります。
《もってのほか》
食用菊の中でも、独特の香りと風味、味の良さで『食用菊の横綱』と評価されるのが、淡い紫色の「もってのほか」です。正式には「延命楽」と呼ばれる品種ですが、県内では「もってのほか」という愛称の方が広く知られています。名前の由来は、「天皇の御紋である菊の花を食べるとはもってのほか」とか、「食べてみたらもってのほかおいしかった」といったことから転化したといわれています。花びらが筒状に丸まった管弁なので、しゃきしゃきとした歯ざわりが楽しめます。
周年出回っていますが、旬は秋で、旬の菊は香りの良さが違います。置賜産の食用菊は8月上旬から12月末までと品種の違いで長い期間出荷されます。「もってのほか」は9月下旬頃から11月下旬まで出荷されます。
食用菊にはクロロゲン酸やイソクロロゲン酸などが含まれ、これらは生活習慣病の引き金ともなる悪玉コレステロールの働きを抑える働きがあります。また、ビタミンAやビタミンB1、B2、E、食物繊維、ミネラルではカリウム、カルシウム、マグネシウムなども含まれます。眼精疲労や視力回復効果、不眠症の改善、頭痛の解消、肩こりや冷え性の改善、血栓予防、解毒や鎮痛、などの効果があるともいわれています。
民間療法では、湯に浸した花をまぶたにのせてると疲れ目回復に効果があります。その他、粉末状にした葉をおできなどの腫れ物に塗布されることもあります。
選ぶ際には、しなびているものや色がくすんでいるものは避け、色が綺麗で、花びらの先までシャキッとしているものが新鮮です。また、食用菊の持ち味はシャキシャキした食感ですが、これは花びらが平らではなく、丸まって筒状になっているためです。選ぶ際にはなるべく花びらが筒状に丸まっている物を選ぶほうが美味しいです。
食べ方としては、おひたしが主流です。酢を加えて茹でることで、鮮やかな色が保たれます。その他、天ぷら、和え物、酢の物、菊飯などに利用されています。