米沢市の東南に位置する梓山地区では、かつてどの農家もたくあん漬け用の大根を栽培していました。地名からとってその大根は「梓山大根」と呼ばれるようになりました。地区名の呼び名は「あずさやま」ですが、徐々になまって「ずさやま」となり、いまでも「ずさやまだいこん」と呼ばれています。
梓山大根は、上杉鷹山公が「かぶは西山に、大根は東南の梓山に作るように」と勧めたことで、この地区で盛んに栽培されるようになりました。昭和初期、契約農家は100軒以上あり、昭和30年頃には“大根市場”が市内に並び、何千本という大根が飛ぶように売れ、農家の収入源になっていたそうです。
しかし高度成長期を迎えると、生産者はたった1軒となってしまいました。1軒の農家が種を守り続け、さらに、この種を絶やしてはいけないと小学校などでの普及活動を行ううち、全国から応援の声が寄せられるようになりました。栽培希望者も現れ、現在では市内10軒の農家で生産されるまでとなっています。
梓山大根の形状は細身で先細り。葉には他の大根にはないイガイガがついているため害虫を寄せ付けにくく、暑い時には天へと高く上げ地熱を放出、寒い時には地面に張り付くように下ろし地熱を逃さないようにしています。まさに、自然のことをよく知って成長していく作物ですね。
8月に種を蒔き、11月には収穫できる梓山大根。収穫期は、根が土をぐっととらえているため、非常に抜けにくいです。
梓山大根は水分が少なく、濃厚な風味を持ちます。切って生で食べれば甘く、おろして食べれば非常に辛いです。固くて辛い大根は干して塩漬けのたくあんにします。たくあんにすると、着色を加えなくても自然と黄色になります。ぱりぱりと歯ざわりがよく、その歯ざわりは数年保たれますので、漬物に最適な大根と言えます。夏には、たくあんを薄切りにして酢と砂糖をかけておやつにしてもおいしく食べられます。