日本では、かなり昔に中国から伝わっていることがわかっています。919年の書物にすでにうこぎが中国名「五加(うこ)」として登場しています。1603年のポルトガル人向けの日本語の辞書には「うこぎの葉は和え物にされる」という記述があり、少なくとも江戸時代の初めにはごく一般的野菜であったと言えます。
米沢のうこぎについて、某テレビ番組では「垣根を食べている人たちがいる」などというように伝えましたが、確かに半分は当たっています。
しかし、その発想は本来の目的とは逆なのです。「食べられるものを垣根にした人たちがいる」これが真実です。
これは江戸時代、今でも米沢の人々に尊敬されている米沢藩主上杉鷹山公が推奨したもので、うこぎには棘があり人や動物を防ぐことが出来る上に、さらに葉が食べられ、根は薬にもなるうこぎを用いることで、普段の料理にも飢饉などの様々な緊急事態にも生かせるという合理的な発想のもと生まれたものなのです。うこぎは主に新芽を食べるのですが、一度摘んでも次々と生えてくるという面もまた素晴らしいものです。また、日当たりも環境も選ばない適応性の高さを持っています。これ以上に生垣に適した樹種はないのではないでしょうか。
米沢で食用としているのは「ヒメウコギ」という種類です。もともとは薬用として日本に持ち込まれ、荒地にも強く丈夫なため庭や生垣に植えられました。ヒメウコギの大部分は雌木で、とげが少なく葉も柔らかなため、食用に向いています。うこぎは、3月~5月頃に出てくる若葉や芽を摘んで食べます。触ってみてぽきっと折れるところから摘むと柔らかい部分だけ食べられます。
生垣にしているうこぎから芽を摘んで収穫もしますが、パックなどに入って売られているうこぎは、畑で栽培されたものです。最近は「うこぎ新梢」という、うこぎの芽を10センチ程度に伸ばして収穫したものもあります。
うこぎは独特の香気と味を有し、栄養価も高く、ポリフェノールや食物繊維、カルシウム、ビタミンC、などを豊富に含んでおり、抗酸化作用や血糖値低下作用、コレステロール低下作用、腸内環境改善などの効果があることがわかってきており、今では注目の健康食材となっています。
伝統の味としては、「切りあえ」が挙げられます。味噌と砂糖を鍋で温め、茹でたうこぎと混ぜながらみじん切りにしたものです。ごまやくるみを混ぜても美味。うこぎご飯も定番です。うこぎご飯は、ほんのりとした塩味にうこぎの香りと風味がおいしく、米沢市内の小学校の給食でも出されており、人気があります。その他にも、おひたしやうこぎご飯、天ぷらなどで食されている他、新しいうこぎ料理も考案されています。
参考文献
おしゃべりな畑―やまがたの在来作物は生きた文化財― ~どこかの畑の片すみでⅡ~
山形在来作物研究会/編 山形大学出版会 2010年刊