米沢の冬の伝統野菜である雪菜は、米沢市の西側に位置する上長井地区(笹野、遠山、古志田)で栽培されています。米沢藩9代藩主上杉鷹山が、冬の野菜を確保するために栽培を奨励したものです。もともとは「かぶのとう」と呼ばれ、米沢市上長井地区特産の伝統野菜「遠山かぶ」の“とう(花茎)”を食していました。それが、越後から伝えられた「長岡菜」などとの自然交雑を繰り返し、その中から選抜育成したものが現在の形となっています。
雪菜はほかの品種と混ざりやすく、純系統の種子を確保することが難しい野菜です。そのため、生産者自らが自家採取しながら多品種の混合を防ぎ、代々種を守っています。
栽培方法はとってもユニーク。雪の中で“育つ”野菜なのです。
全国的に見ても、雪の中で保存することでおいしくなる野菜はたくさんありますが、雪の中で育つ野菜というのは、とても珍しいですね。
雪菜は8月下旬ごろ種をまき、11月中ごろから12月上旬にかけて収穫されます。ここまでは普通の秋野菜と同じです。そこからが、雪菜独特の栽培方法。
収穫した雪菜を10株ほどずつ束ね、1箇所にまとめて稲わらと土で囲う床寄せ作業を行い、雪室を作ります。あとは、雪が降るのをじっと待ちます。雪が降り積もり周囲をすっぽりと雪で覆われると、雪室の中の気温と湿度が一定になり、その中で雪菜は成長を続けます。「とう」(花茎)が立つほど育ったところで、雪から掘り出して収穫します。秋の収穫時には50~70cmある雪菜は、冬の収穫時には自らの茎や葉を栄養分にして1/4ほどになっています。
雪菜は、食物繊維や無機質(カリウム、リン等)、ビタミンCが多く含まれているため、野菜が不足しがちな真冬の貴重な栄養源でした。
生の雪菜はほのかに甘く、後からふわっと苦味が来ます。くせがなくセロリに似た食感ですので、生のまま味噌つにけたりサラダにしても美味。
雪菜の食べ方で最もポピュラーなのが、「ふすべ漬け」という漬物。“ふすべる”は米沢の方言で“湯通しする”ことを言い、湯通しすることで雪菜から独特の辛み成分が出てきます。この湯通しした雪菜を塩漬けにしたものが、ふすべ漬けです。ワサビともカラシとも違う、独特の辛味とほのかな甘み、シャキシャキとした食感が病みつきになります。日本酒が飲みたくなるおいしさです!